期待に満ちたSIMを通しての日本の教会の世界宣教

                                  小川国光

                                  SIM日本委員会委員長

                                  東京恵約キリスト教会牧師

SIMの働きに参与して

 私がSIMの働きに関わるようになって10年余が過ぎようとしています。私がこの働きに関わる以前、日本人のSIM宣教師だった方が二名おられたのですが、両者とも米国のSIMから遣わされておりました。吉岡陽子師(ニジェール派遣)はご家族の情況で何年間か休職中で、もうひとりの方は米国人ロジャー・セツ氏と結婚された博子夫人(南アジア派遣)でした。新たに清水担・いずみ宣教師一家がタンザニアに派遣されようとする中で、当時SIM東アジアのディレクターをされていたアンドリュウ・ング師から、是非ともSIM日本委員会を立ち上げて欲しいと依頼を受けたのでした。

 当時私は牧会に従事しており、教派、超教派の責任もありましたが、私自身十七年宣教師として奉仕し、その後も日本の教会の宣教の働きに重荷をもっておりましたので、信仰をもって受け止めさせていただきました。

そして杉山敏夫師(福音交友会:現在は中村徹師)、石川新師と畑中洋人師(両者とも日本同盟基督教団、三留勤氏は数年間奉仕後辞退)、入月英明師(日本福音キリスト教会連合)と共に宣教師発掘と派遣の一端を担わせていただいてきました。各々に忙しい牧会の中でも真実に世界宣教の重荷を負っていてくださる先生方です。

 この間、清水宣教師一家に加えて、吉岡宣教師がニジェールに再派遣されることになり(現在は引退)、新たに太田ともえ宣教師がパキスタンに、小川堅・真理子宣教師一家がタンザニアに派遣されています。セツ宣教師ご一家は米国SIM派遣ですが、日本にも支援教会があり、日本委員会としてよい交わりを築いています。日本人男性で英国人の方と結婚してSIMイギリスからアフリカのマラウィに遣わされている方もいます。ある婦人の宣教師候補も起こされましたが、現地に適応できない情況が起き、残念ながら派遣に至りませんでした。現在、SIMを通して将来の宣教師派遣を祈っている方々が何名かおられます。このような中で畑中師の教会の加藤直美姉が会計実務の奉仕を始めてくださっています。

 

SIM東アジア

 リーダーシップがアンドリュウ・ング師からスタンレー・リング師に代わり、更にSIM東アジアが発展しています。日本の委員会が加わる前に、シンガポール、東マレーシア、西マレーシア、台湾、香港、フィリピン、韓国に委員会が設置され、韓国はすでに東アジアから独立してSIM韓国として独自にSIMの国際的働きに参与しておりました。その後、インドネシア、北東インドにも委員会が設置され宣教師派遣がなされています。SIM東アジアの本部はシンガポールにあり、現在20名近くの方々がSIMの働きに従事しています。諸教会によく支えられて働きが進められています。

 SIM東アジアのスタートには二組の神の人が関わっています。ひとりはアフリカのニジェールに宣教医師として遣わされたシンガポール出身のアンドリュウ・ベリンダ・ウグ師夫妻であり、もうひとりは彼らとは別に北米留学中にSIMのアフリカの働きを知り訪問し、母国マレーシアおよび東南アジアに戻ってSIMの宣教のビジョンを中国人諸教会に分ち始めたユークオン・リリー・シュエ師夫妻です。このように、SIM東アジアはいわゆる東南アジア諸国の中国人の諸教会(シンガポールだけは英語教会も)が中心に支援されてきた背景があり、台湾、香港はもちろんのことフィリピン、インドネシアでさえも支援母体は中国系の教会なのです。そこにはSIMの働きの一貫として世界中の中国人宣教のビジョンもあります。しかし現地人の宣教師、指導者やスタッフが加えられる中で、非中国系の日本やインドが加わる中で、より国際的になってきています。

 日本からのSIM宣教師はまだ10 名弱ですが、主は将来多くの働き人を起こし、世界各地に遣わしてくださるときが来ることを信じています。

 

SIMの歴史を知る

 一昨年、SIM日本委員会でSIM宣教団体の創立者三人のひとり(二人は現地に到着後まもなくマラリヤなどの病いで召された)ローランド・ビングハムの伝記の翻訳を出版できました。日本の諸教会とクリスチャンの方々が是非とも一読してくださり、SIMの働きの開拓期の働きを知り、宣教のビジョンに捕らえられて欲しいと願っています。

 十九世紀の終わり(1893年)に始まったアフリカの「スーダン奥地宣教」は、当時のヨーロッパ諸国からの宣教師たち(東海岸沿いに留まっていた)が預言したように、初めは不可能なことでした。実際三人の内二人までが奥地に向かおうとして病いで亡くなり、ビングハムも重病の中、帰国を余儀なくされたのです。身体的危険、政治的不安、母国の諸教会の無関心、経済的欠乏の中、力強い宣教の神を信じ続ける中、同労者が起こされ、宣教師が起こされていったのです。その後アフリカ福音宣教会(Africa Evangelical Fellowship)、アンデス福音宣教団(Andes Evangelical Mission)、国際クリスチャン宣教会(International Christian Fellowship)と合流するようになり、アフリカ大陸だけでなく、全世界に2000人以上の宣教師が40数カ国から送り出され、更に40数カ国に派遣される団体となったのです。

 

SIMと日本の教会

 SIMの国際ディレクターはこれまで100年以上ずっと欧米の指導者でした。しかし昨年からアフリカ人がその立場に抜擢されたのです。SIM100年以上も前にナイジェリアで開拓し、今では大きな教派に成長した教会出身の医師、牧師、宣教師で多くのリーダーシップの経験を積んで来た人です。このジョシュア・ボグンジョコ師は来日して日本のSIMリトリートでも奉仕してくださったことがあります。

 ボグンジョコ師を中心に現在SIMの働きは様々な変革を試みようとしています。昨年、今年と興味深い会議が開かれ、SIMの霊的刷新、宣教使命の再確認と優先項目が祈りの中に検討されています。小川堅宣教師も招かれてこの二月に出席しているSIM戦略会議はそのひとつです。未伝地伝道が最優先される中で、日本のSIM委員会として日本の諸教会もアフリカ宣教と世界のイスラム宣教に重荷をもって欲しいと祈っています。宣教師の発掘が急務です。実はまだまだクリスチャン人口の低い日本においても外国からSIM宣教師が必要であり、御心に適った人々が遣わされて来るのを切に願っているところです。教会の健全な成長のためには弟子訓練が必須です。学生・青年伝道、一般およびあらゆる特殊分野での教育指導の働きも急務です。アフリカや南米などでは歴史的に医療宣教が非常に重要です。

その重荷と賜物をもった方々が日本からも続々と起こされ、遣わされることを願ってやみません。

 使徒パウロはローマ書15:14-21で目指すべき宣教の姿を明確にしております。これこそ宣教の聖書的土台となるべきものです。

  1. 宣教の使命は神の恵みによってのみ与えられるものなのです。「私は、異邦人のためにキリスト・イエスの仕え人となるために、神から恵みをいただいているのです。」(15:16a

  2. 宣教の働きは神への礼拝と理解すべきもので、宣教者は祭司の務めを果たしているのです。「私は神の福音をもって、祭司の務めを果たしています。それは異邦人を、聖霊によって聖なるものとされた、神に受け入れられる供え物とするためです。」(15:16b

  3. 宣教奉仕は神の力によって進められものです。「(キリストは)しるしと不思議をなす力により、さらにまた、御霊の力によって、それ(異邦人を従順にする働き)を成し遂げてくださいました。」(15:19

  4. どのような宣教の働きでも常に未伝地伝道を視点に入れたものでなければならない。「私は、他人の土台の上に建てないように、キリストの御名がまだ語られていない所に福音を宣べ伝えることを切に求めたのです。」(15:20

 

 

 

 

アフリカでの宣教                                      T宣教師                              

 

 

  1. アフリカの状況(オペレーション・ワールドより)

 

 人口:約10億人  民族:2500  言語:2110

 

 

 

 

クリスチャン

福音派

ムスリム

アルジェリア

99,183 (0.28%) +7.5%

84,081 (0.2%) +8.1%

34,462,637 (97.29%)

チュニジア

22,785 (0.22%) +1.0%

1,154 (0.0%) +4.7%

10,317,975 (99.37%)

リビア

172,804 (2.64%) +2.8%

19,662 (0.3%) +5.2%

6,350,560 (97.02%)

ニジェール

52,442 (0.33%) +2.1%

21,541 (0.1%) +3.7%

15,430,986 (97.14%)

モロッコ

29,000 (0.09%) +1.3%

4,774 (0.0%) +4.6%

32,738,475 (99.88%)

 

 

 

アフリカ北部はムスリム(イスラム教徒)の割合が圧倒的に多い。例えば、アルジェリアとリビア、ニジェールは97%、チュジニアは99.37%、モロッコに至っては99.88%がムスリムである。パーセントで見るならば、福音派のクリスチャンは0.0%と表示される国もある。しかし、大変厳しい迫害の中も福音宣教は行われ、主イエスにある信仰を持つ人々は確かにおられる。モロッコでは4,774名、チュニジアで1,154名とある。これらの国々に宣教師が入国し、活動するのは容易ではない。すでに救われている地元の人々のために、迫害からの守りと同時に福音宣教に一人一人が用いられるように祈らされる。

 

 

 

  1. ムスリムへの宣教では次のようなことを心がけている。

 

・傍らに座って一緒に聖書を読む。物語る。

 

・聖書だけを用いる。コラーンを使って、ムスリムへの宣教を行なっている人々もいるが、聖書だけにすべての答えを求めることで、意識が聖書に向けられていく。

 

・質問・疑問に耳を傾け、誠実に答える。ムスリムがモスクで教えられているキリスト教や聖書への批判を正面から受け止め、御霊の助けを求めつつ、答えていくことで、人々の障害が一つ一つ取り除かれる。答えられない時は、「調べてきます」と次回に持ち越す。

 

・ジーザス映画を使って、イエス様ご自身の歩みを見ていただく。

 

・子供伝道、青年、婦人、壮年など、人々の状況に応じたアプローチをする。男性は女性から教えられるのを嫌がる。イスラム教を教え込まれる前の子供たちへの宣教は重要な種まきである。

 

・主に祈る。ムスリムへの宣教は霊的な戦いである。主が人々の心を開き、みことばに応答させてくださるように切に祈る。

 

「…律法の行いによってではなく、キリストを信じる信仰によって義と認められるためです。なぜなら、律法の行いによって義と認められる者は、ひとりもいないからです。」ガラテヤ2:16

 

 

 

 

 

 

 

SIMの宣教師としての各国(タンザニア)のニーズ」    K宣教師

 

 

 

 SIM宣教団はその歴史の中で、福音伝道だけではなく社会的奉仕にも力を注いできている宣教団体として知られています。タンザニアを含めた東アフリカにおいては、特に学校教育、医療宣教といった社会奉仕に、より焦点が向けられてきたこともあり、さらに教会形成、御言葉宣教への働き人が必要であると言われています。それでも、奴隷貿易の歴史と西欧の植民地時代の負の遺産によって多くの傷とハンデを負っており、私達の狭い視野で見ても、教育向上の課題、物質的貧困、医療従事者の不足等に取り組んで行く事が今後更に必要になると考えます。

 タンザニアにおいては、宣教師ビザが国から発行され、御言葉宣教の自由が与えられている今、様々な働きの可能性が挙げられますが、現在はSIMから長期宣教師家族が私達を含めて3家族遣わされており、教会形成と伝道に重点を置いた長期的宣教が展開されています。とりわけ私達夫婦は、先に取り上げた課題と共に、それ以上に必要と感じていることは、人々がイエスキリストの十字架と復活を信じる事です。こちらにきて驚いた事は、人々の内に創造主、義、聖、善なる神観がしっかりと根付いていることです。これはイスラム教の創唱者ムハンマドがユダヤ教の影響を受けた名残だと言われています。こういうわけで、イスラムの背景を持つ方々はイエスキリストを預言者としては認めますが、神と人の間に平和をもたらされた方としては否定します。このような人々の内にイエスキリストが迎え入れられ、キリストにあって贖われ、内側から外に向かって変えられていく必要を強く感じています。一人でもイエスキリストと共に歩む者、キリストの弟子が起こされる時、その人の状況、その周囲の状況や人々に大きなインパクトをもたらします。そこから神の国が更に広がり、上記の課題が本当の意味で解決されていく事を期待できるのではないかと思います。この働きの成果を見るのは短期間では難しいでしょう。しかし、長期的な視点をもってキリストの愛と忍耐によってこの働きに取り組んで行く時、少しずつでも実を見る事が出来ると思います。どうか、私達夫婦が御言葉を通してキリストを人々にお分かち、人々と共にキリストの内に生き抜いて行ける様にお祈り下さい。